2014年3月31日、ついに国民的長寿番組『笑っていいとも!』(フジテレビ系)が32年の歴史に幕を下ろした。最後のレギュラー放送となった同日の午後12時からは、お笑い界の大御所ビートたけしがテレフォンショッキング最後のゲストとして出演し、佐村河内ネタを織り交ぜたハチャメチャな内容の表彰状をタモリに授与し、明石家さんまを電話で呼び出してビッグ3の共演を実現させるなど、まさに“らしく”番組を盛り上げた。そして、同日午後8時に始まったグランドフィナーレの生放送では、テレビバラエティ史上に残る豪華なキャスティングが実現したのだった。
普段の放送とは違い、観客席に番組関係者を迎えて始まったグランドフィナーレ。その後、関係者たちに代わって歴代レギュラーを務めた総勢77人の有名芸能人が客席につくと、オープニングゲストとして吉永小百合が生中継で出演。そして明石家さんまが登場すると往年のフリートークをタモリと展開。さんまの熱のこもったトークに引っ張られるように徐々にタモリも熱くなり、さんまと一緒に大竹しのぶのモノマネをしつこく披露するなど、久しぶりにテンションの高いタモリが顔を覗かせた。
そんなさんまとタモリのトークが長時間続くなか、突如登場したのがダウンタウンとウッチャンナンチャン。放送前から出演の見込まれていた2組の登場に、スタジオの芸能人たちも、いち視聴者のような驚きの反応を見せ、さらにスタジオはヒートアップする。しかし、この2組が一緒に登場することは多くの視聴者が予想をしていたことでもあり、「ついに!?」と期待された、とんねるず×ダウンタウンや、ダウンタウン×爆笑問題といった、不仲説の流れる芸人同士の共演は次の機会に持ち越しなのかという空気も流れた。
しかし、そんな空気を察知したダウンタウンの松本は、すかさず「とんねるずが来るとネットが荒れるから」と発言。スタジオは笑いに包まれたが、そんな松本の言葉に敏感に反応したのが、ほかでもないとんねるず。そのとき舞台の上には、さんま、タモリ、ダウンタウン、ウンナン。これだけでも豪華すぎる出演者がいる中に、「なげーよ」と言いながら登場したのが石橋だった。そしてゆっくりとした足取りでやって来る木梨。思わずスタジオの芸能人たちも「おお~」と興奮するほど、突如夢の共演が果たされたのだった。
身内といえるスタジオの有名芸能人たちも素直に驚くダウンタウンととんねるずの共演。視聴者の驚きと興奮は想像に難くない。そして次にやって来たのが爆笑問題。こちらもダウンタウンとの不仲説があり、まさに奇跡の共演が果たされた瞬間であった。もちろん彼らの共演はネット上でもすぐに話題になり、ネットニュースでは速報が出て、2ちゃんねるにはいくつものスレッドが乱立するお祭り騒ぎとなった。特に、「ネットが荒れるから!」と連呼する松本に対して、石橋が「松本がネットで荒れるって言うから!」と声を上げると、身震いするような感動が多くの視聴者にも沸き起こったことだろう。
話の内容もほとんどなく、いつまでもグダグダな時間が続いたが、いつまでも見ていたいと思わせる力を持っていた夢の共演。そしてそれが終わるとSMAPによる「ありがとう」の熱唱とレギュラー陣による感謝のスピーチ。ただ延々とタレントが言葉を紡ぐだけだが、これもまた感動的なシーンの連続だった。特に、涙に暮れるのかと思われたスピーチが続いた中で、バナナマンの日村は、いち早く空気を一変させることに成功し、まざまざとその芸人魂を見せつけた。やはり『笑っていいとも!』という番組には笑い声がしっくりくる。そしてそれが芸人たちによるタモリへの最大の感謝の印なのだろう。
間違いなくテレビバラエティ史の一大事件として記憶される『いいとも』のグランドフィナーレ。そしてそれはバラエティ界の大きな区切りとなるに違いない。とんねるずやダウンタウンが同じステージに立つ中で、唯一人その場を仕切っていたSMAPの中居が、タモリへのスピーチの中で「バラエティは残酷」と言っていたが、盛大な宴の後には再びバラエティ界の熾烈な争いが待っている。奇しくも今回の放送では、それぞれの芸人たちの実力が如実に現れてもいた。そしてそれは、(世代に関係なく)新しい時代の幕開けを予感させるものだった。
数多の芸能人をスタジオに集め、熱気溢れる空間を生み出したタモリ。その熱気は低迷が続くバラエティの起爆剤となりうるほどの感動を視聴者に届けた。最後にタモリは、「明日も見てくれるかな?」といつもと同じフレーズで番組を終わらせたが、それは、これまでタモリが歩んできたバラエティ番組全体のことなのかもしれない。
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